「グローバルプロジェクトでリスク管理表を英語でまとめなければいけない。どんな列を用意すればいい?」プロジェクトマネジメントの現場で、リスクを英語で整理するのに戸惑う人は多い。
この記事では、ITプロジェクトで実際に使えるリスク管理表(Risk Register)の日英テンプレートをそのまま提供する。発生確率×影響度・対応戦略(回避/転嫁/軽減/受容)の書き方と、リスク報告で使える英語表現もセットで解説する。
この記事を読めば、英語リスク管理表の構成と書き方が身につき、コピーして即日使えるテンプレートが手に入る。
結論から言う。リスク管理表に必要なのは6つの必須列だ。なかでも「リスクスコア(Risk Score)」と「対応戦略(Response Strategy)」の2列が、優先順位付けと行動計画の質を左右する最重要ポイントになる。
英語リスク管理表が日本語と異なる3つのポイント
英語スタイルのリスク管理表は、日本語のリスク一覧表とは求められる粒度が異なる。違いを押さえないと、グローバルチームとのリスク共有がかみ合わない。
① 発生確率×影響度でスコアを数値化する
「リスクがある」だけでは優先度が判断できない。発生確率(Probability)と影響度(Impact)をそれぞれ3段階(High/Medium/Low)で評価し、掛け算でリスクスコアを出す。スコアが高い順に対応優先度を決めるのが標準スタイルだ。
② 4つの対応戦略から選ぶ
英語圏のリスク管理では、対応方針を回避(Avoid)・転嫁(Transfer)・軽減(Mitigate)・受容(Accept)の4種類に分類する。「対応する」だけでなく「どの戦略で対応するか」を明示することで、承認者が判断しやすくなる。
③ ステータスで「生きている」管理表にする
リスク管理表は作ったら終わりではない。Open / In Progress / Closedのステータスと定期レビュー日を管理することで、リスクの変化をリアルタイムで追跡できる。
リスク管理表の6つの必須列(日英対訳)
英語リスク管理表を構成する6つの必須列を日英対訳で解説する。
① リスクID・カテゴリ(Risk ID / Category)
R-001、R-002のように連番IDをつけてカテゴリ(スケジュール・コスト・技術・リソースなど)を分類する。IDがあると議事録やメールで「R-003の件ですが」と参照でき、追跡が楽になる。
| カテゴリ(日本語) | Category (English) |
| スケジュール | Schedule |
| コスト | Cost |
| 技術 | Technical |
| リソース | Resource |
| 外部依存 | External Dependency |
② リスクの説明(Description)
「〇〇が〇〇になる可能性がある」という形式で1〜2文で記載する。英語では “[X] may [occur], potentially impacting [Y].” の型が使いやすい。原因と結果をセットで書くと伝わりやすい。
③ 発生確率×影響度(Probability × Impact)
発生確率と影響度をそれぞれHigh(3)/ Medium(2)/ Low(1)で評価する。評価基準をチームで統一しておかないと、人によってHighとMediumの基準がずれる。事前に定義を共有しておくことが重要だ。
| レベル | 発生確率 | 影響度 |
| High(3) | 70%以上 | プロジェクト全体に重大な影響 |
| Medium(2) | 30〜70% | 一部の機能・スケジュールに影響 |
| Low(1) | 30%未満 | 影響は軽微・局所的 |
④ リスクスコア(Risk Score)
発生確率×影響度の掛け算でスコアを算出する(最大9)。スコアが高い順にリスクを並べ替えると優先度が一目でわかる。スコア7以上は高リスクとして週次レビューの議題に上げるのが一般的だ。
⑤ 対応戦略(Response Strategy)
回避(Avoid)・転嫁(Transfer)・軽減(Mitigate)・受容(Accept)の4種類から選ぶ。選んだ戦略に応じて「対応内容(Response Action)」を具体的なアクションで記載する。
| 戦略 | Strategy | 説明 |
| 回避 | Avoid | リスクの原因を排除してリスクをなくす |
| 転嫁 | Transfer | リスクをベンダーや保険など第三者に移転する |
| 軽減 | Mitigate | 発生確率または影響度を下げる対策を取る |
| 受容 | Accept | リスクを許容し発生時に対応するコンティンジェンシー計画を用意する |
⑥ 担当者・期限・ステータス(Owner / Due Date / Status)
担当者・期限・ステータス(Open / In Progress / Closed)を記載する。ステータス管理がないと「対応中のはずが誰も動いていない」状況が生まれる。定期レビューのたびにステータスを更新する運用にすることが大切だ。
日本語版テンプレート(コピペOK)
以下をコピーして、プロジェクトのリスク管理表としてそのまま使える。
# リスク管理表(Risk Register)
**プロジェクト名:** 〇〇プロジェクト
**作成者:** 〇〇(役割:〇〇)
**最終更新日:** 2026年〇月〇日
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## リスク管理表
| リスクID | カテゴリ | リスクの説明 | 発生確率 | 影響度 | スコア | 対応戦略 | 対応内容 | 担当者 | 期限 | ステータス |
|---------|---------|------------|---------|--------|-------|---------|---------|--------|------|---------|
| R-001 | スケジュール | 〇〇の遅延により納期に影響する可能性がある | 高(3) | 高(3) | 9 | 軽減 | 〇〇のバッファを〇週間追加する | 〇〇 | 〇月〇日 | オープン |
| R-002 | コスト | 〇〇の見積もりが超過するリスクがある | 中(2) | 高(3) | 6 | 軽減 | 週次でコスト実績を確認する | 〇〇 | 〇月〇日 | 対応中 |
| R-003 | 技術 | 〇〇の制約により要件を満たせないリスクがある | 低(1) | 高(3) | 3 | 受容 | 発生時は代替案〇〇を採用する | 〇〇 | 〇月〇日 | オープン |
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## 評価基準
| レベル | 発生確率 | 影響度 |
|--------|---------|-------|
| 高(3) | 70%以上 | プロジェクト全体に重大な影響 |
| 中(2) | 30〜70% | 一部の機能・スケジュールに影響 |
| 低(1) | 30%未満 | 影響は軽微・局所的 |
リスクスコア = 発生確率 × 影響度(最大9)
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作成者:〇〇 | 作成日:〇月〇日
英語版テンプレート(コピペOK)
英語リスク管理表はそのままグローバルチームやステークホルダーに共有できる。
# Risk Register
**Project:** [Project Name]
**Author:** [Name] ([Role])
**Last Updated:** [Date]
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## Risk Register
| Risk ID | Category | Description | Probability | Impact | Score | Response Strategy | Response Action | Owner | Due Date | Status |
|---------|----------|-------------|-------------|--------|-------|-------------------|-----------------|-------|----------|--------|
| R-001 | Schedule | [X] may be delayed, potentially impacting the delivery date. | High (3) | High (3) | 9 | Mitigate | Add [X]-week buffer to [milestone]. | [Name] | [Date] | Open |
| R-002 | Cost | Cost overrun of [X]% is possible due to [reason]. | Medium (2) | High (3) | 6 | Mitigate | Review cost actuals weekly for early detection. | [Name] | [Date] | In Progress |
| R-003 | Technical | [System] may not meet requirements due to [constraint]. | Low (1) | High (3) | 3 | Accept | If triggered, adopt alternative approach [X]. | [Name] | [Date] | Open |
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## Probability & Impact Scale
| Level | Probability | Impact |
|-------|-------------|--------|
| High (3) | >= 70% | Significant impact on the overall project |
| Medium (2) | 30-70% | Impact on some features or the schedule |
| Low (1) | < 30% | Minor or localized impact |
Risk Score = Probability x Impact (max 9)
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Prepared by: [Name] | Created: [Date] | Last updated: [Date]
リスク管理表で使える英語表現15選
リスク管理表を書くときや会議でリスクを説明するときに使える表現を場面別にまとめた。
リスクを特定・説明するとき
① [X] may [occur], potentially impacting [Y].(〇〇が〇〇になり、〇〇に影響する可能性がある)
② We have identified a risk related to ~(〜に関するリスクを特定した)
③ There is a risk that ~ could result in ~(〜が〜につながるリスクがある)
④ This risk is triggered by ~(このリスクは〜によって引き起こされる)
⑤ A key dependency risk is ~(主要な依存リスクは〜だ)
発生確率・影響度を評価するとき
⑥ The probability is assessed as High / Medium / Low.(発生確率は高/中/低と評価している)
⑦ The impact would be significant, affecting the overall delivery.(影響は大きく、全体の納期に影響する)
⑧ The risk score is [X], making it a [high/medium/low]-priority item.(リスクスコアは〇で、〇優先度の案件だ)
⑨ This is classified as a high-probability, high-impact risk.(これは高確率・高影響度リスクに分類される)
⑩ The likelihood has increased since the last review.(前回のレビュー以降、発生確率が上がった)
対応戦略を提示するとき
⑪ Our response strategy for this risk is to Mitigate by ~(このリスクへの対応戦略は〜による軽減だ)
⑫ We will transfer this risk to [vendor] through the SLA agreement.(このリスクはSLA契約を通じて〇〇ベンダーに転嫁する)
⑬ We recommend accepting this risk with a contingency plan in place.(コンティンジェンシー計画を用意したうえでこのリスクを受容することを推奨する)
⑭ The risk has been closed following the completion of ~(〜の完了によりこのリスクはクローズした)
⑮ We will revisit this risk at the next review if the situation changes.(状況が変わった場合は次回レビューでこのリスクを再評価する)
リスク報告や会議でのフレーズをさらに学びたい方は、【例文あり】エンジニアの英語リスク管理術|リスク特定・対策・報告フレーズ30選も参考にしてほしい。
リスク管理表を運用するときの3つのコツ
① 週次レビューで必ずステータスを更新する
リスク管理表は作成時だけでなく、週次の定例会議で全リスクのステータスをレビューする習慣が大切だ。スコア7以上の高リスクは必ず議題に上げ、担当者が対応状況を報告する。
② リスクが顕在化したら変更要求書に切り替える
リスクが実際に発生したときは、リスク管理表に留めず変更要求書(Change Request)を起票してスコープ・スケジュール・コストへの影響を正式に申請する。リスクと変更管理を連動させることで、プロジェクトのトレーサビリティが保たれる。詳しくは【テンプレあり】英語変更要求書の書き方|ITプロジェクトで使える日英フォーマット付きを参考にしてほしい。
③ リスクIDでチケットと紐付ける
Jira・GitHub IssuesなどのチケットにリスクID(例:R-001)を記載することで、リスク管理表とタスク管理を連動させられる。「このIssueはR-001のリスク対応です」と伝えるだけで文脈が共有できる。
まとめ:6列の管理表で英語リスクレジスターが完成する
英語リスク管理表の構成と書き方をまとめる。
- 6つの必須列:リスクID/カテゴリ・説明・発生確率・影響度・スコア・対応戦略・担当/期限/ステータス
- 英語スタイルの3つの特徴:スコアの数値化・4種の対応戦略・ステータス管理
- 15の英語表現:リスク特定・評価・対応戦略の場面ごとに使い分ける
- 3つのコツ:週次更新・変更要求書との連動・チケットとの紐付け
テンプレートは上記をコピーしてすぐ使える。プロジェクトの規模や業種に合わせてカテゴリ列の選択肢をカスタマイズしてほしい。


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