英語でドキュメントを書こうとすると、どこから手をつければいいかわからなくなる。
「日本語で考えた内容を英語にするとぎこちない」「丁寧に書こうとすると回りくどくなる」「コメントやissueを英語で書くのに時間がかかりすぎる」——こうした悩みを抱えるエンジニアは多い。
この記事では、技術英語ライティングの基本ルール5つと、ドキュメント・メール・コードコメントで即使えるフレーズを30個まとめた。
この記事を読めば、次のことがわかる。
- 技術英語で「伝わる文章」を書くための5つの基本ルール
- 仕様書・メール・コードコメントで使えるフレーズ30選
- ライティング力を鍛える3つの実践習慣
結論からいうと、技術英語ライティングは「ルール」と「型」を覚えれば上達する。 流暢な英語表現より、シンプルで正確な構造の方がはるかに伝わる。
技術英語ライティングでエンジニアが陥りがちな3つの失敗
日本語の文章構造をそのまま英語に変換してしまう
日本語は「結論が最後に来る」構造が一般的だ。 「〇〇を調査した結果、△△であることがわかったので、□□という対応を行う」という書き方がその典型例だ。
英語ではこの逆が基本になる。 「□□という対応を行う。理由は△△だからだ。調査の結果を以下に示す」——結論を先に書き、理由・詳細を後に続ける構造が、技術英語の標準だ。
丁寧にしようとして回りくどい文章になる
英語で礼儀正しく書こうとすると、余分な言葉が増えがちだ。
「It would be greatly appreciated if you could kindly take a look at this when you have some time available.」——これは丁寧すぎて読みにくい。 「Could you review this when you have a chance?」——技術文書ではこの程度の丁寧さで十分だ。
技術英語は「短く、明確に、正確に」が鉄則だ。
受動態を多用して主語が不明確になる
「The bug was fixed.」——誰が直したのかわからない。 「The system was updated.」——誰が、何のために更新したのかわからない。
受動態は「誰がやったかを隠したいとき」以外は使わない方がよい。 能動態にするだけで、文章が格段に明確になる。
技術英語ライティングの5つの基本ルール
①結論から書く(ボトムアップ思考を捨てる)
技術英語では「結論→理由→詳細」の順で書くことが基本だ。
NG例:
We investigated the performance issue and found that the database query was inefficient. We have therefore decided to add an index.
OK例:
We will add a database index to fix the performance issue. The investigation revealed that the query was inefficient due to missing indexes.
読み手は最初の一文で「何の話か」を把握できる。 結論を先に書くことで、相手が素早く判断・行動できる文章になる。
②1文1メッセージで短く書く
1つの文に複数のメッセージを詰め込むと、読み手の理解速度が落ちる。
NG例:
This function takes a user ID as input and queries the database to retrieve the user’s profile information and returns it as a JSON object, but it may return null if the user is not found.
OK例:
This function takes a user ID and returns the user’s profile as a JSON object. It returns null if the user is not found.
1文を60語以内に収めることを目安にすると、自然に読みやすい文章になる。
③能動態を優先する
受動態より能動態の方が、誰が何をするのかが明確になる。
| 受動態(NG) | 能動態(OK) |
|---|---|
| The error was caused by… | The missing null check caused the error. |
| The API was updated by the team. | The team updated the API. |
| The file should be deleted. | Delete the file before deployment. |
命令形(Delete, Run, Configure など)も技術文書では積極的に使ってよい。 手順書やREADMEでは命令形が標準だ。
④具体的な数字・固有名詞を使う
曖昧な表現は技術文書では厳禁だ。
| 曖昧(NG) | 具体的(OK) |
|---|---|
| This may take some time. | This process takes approximately 3 minutes. |
| The response is slow. | The API response time exceeds 2 seconds. |
| Update the config file. | Update config.yaml in the /etc/app/ directory. |
数字・ファイル名・コマンド・URLなどは必ず具体的に書く。
⑤読み手のレベルに合わせた語彙を選ぶ
同じチームのエンジニアに書くのか、非技術者のステークホルダーに書くのかで、使う語彙は変わる。
- エンジニア向け:専門用語をそのまま使ってよい
- マネージャー向け:技術的な詳細より影響・コスト・期間を優先する
- 全社向け:専門用語は避け、平易な言葉で説明する
読み手を常に意識することが、技術英語ライティングの最重要ポイントだ。
ドキュメント・仕様書で使えるフレーズ・表現10選
英語プルリクエストの書き方と共通するフレーズも多い。 PRの英語表現については以下の記事も参考にしてほしい。
英語プルリクエストの書き方【エンジニア向け例文テンプレ付き】
目的・概要を説明する表現
① This document describes [ドキュメントの内容]. 「このドキュメントは[内容]について説明します。」仕様書・設計書の冒頭で使う定番フレーズ。
② The purpose of this [feature / change / document] is to [目的]. 「この[機能/変更/ドキュメント]の目的は[目的]です。」目的を明確に示すフレーズ。
③ This change addresses [問題 / issue #番号]. 「この変更は[問題/issue番号]に対応します。」変更の背景を示すフレーズ。
④ The following diagram illustrates [説明内容]. 「次の図は[内容]を示しています。」図の説明に使う定番表現。
要件・制約を説明する表現
⑤ This feature requires [前提条件]. 「この機能には[前提条件]が必要です。」前提条件を示すフレーズ。
⑥ The system must [要件]. / The system should [推奨事項]. 「システムは[要件]を満たさなければなりません。/ [推奨事項]を満たすことが推奨されます。」MustとShouldを使い分けて要件の強度を示す表現。
⑦ This is out of scope for this release. 「これは今回のリリースのスコープ外です。」スコープを明確にするフレーズ。
補足・注意事項を伝える表現
⑧ Note: [注意事項] 「注意:[内容]」ドキュメントで注意を促すときの定番表現。
⑨ See [リンク / セクション名] for more details. 「詳細は[リンク/セクション名]を参照してください。」参照先を示すフレーズ。
⑩ As of [日付 / バージョン], this behavior has changed. 「[日付/バージョン]時点で、この動作が変更されました。」変更履歴を伝えるフレーズ。
英語メール・チャットで使えるライティングフレーズ10選
Slackなどのチャットツールでも活用できるフレーズだ。 Slackでの英語表現については以下の記事も参考にしてほしい。
エンジニアのSlack英語フレーズ30選【実務シーン別に厳選】
依頼・確認を伝える表現
⑪ Could you review [成果物] by [期限]? 「[期限]までに[成果物]をレビューしていただけますか?」期限付きのレビュー依頼フレーズ。
⑫ I’d like to get your input on [トピック]. 「[トピック]についてご意見をいただきたいです。」意見を求めるときのやわらかな表現。
⑬ Could you confirm that [確認内容]? 「[確認内容]を確認していただけますか?」確認依頼のシンプルなフレーズ。
⑭ Please let me know if you have any questions. 「ご不明な点があればお知らせください。」メール・チャットの締めに使う定番フレーズ。
報告・共有する表現
⑮ I wanted to give you a quick update on [トピック]. 「[トピック]について簡単にアップデートをお伝えしたいと思います。」進捗報告の冒頭フレーズ。
⑯ Here’s a summary of [内容]: 「以下は[内容]のまとめです:」箇条書きでの情報共有に使うフレーズ。
⑰ FYI: [情報] 「ご参考まで:[情報]」For Your Informationの略。アクション不要の情報共有に使う。
⑱ This is a heads-up about [今後起きること]. 「[今後起きること]について事前にお知らせします。」事前通知のフレーズ。
締めの一言フレーズ
⑲ Thanks for your help with this. 「ご協力ありがとうございます。」シンプルなお礼フレーズ。
⑳ Looking forward to your feedback. 「フィードバックをお待ちしています。」返信・フィードバックを促す締めフレーズ。
英語コメント・コードドキュメントで使えるフレーズ10選
関数・クラスの説明コメント
㉑ Returns [戻り値の説明]. 「[戻り値]を返します。」関数の戻り値を説明するコメントの定番表現。
㉒ Throws [例外名] if [条件]. 「[条件]の場合、[例外名]をスローします。」例外の発生条件を説明するコメント。
㉓ @param [引数名] – [引数の説明] 「[引数名] – [説明]」JSDocやDoxygenで引数を説明するフレーズ。
㉔ Initializes [コンポーネント名] with [設定内容]. 「[設定内容]で[コンポーネント名]を初期化します。」コンストラクタのコメントに使う表現。
TODOコメントの書き方
㉕ TODO: [やること] — [担当者名] ([日付]) 「TODO:[内容] — [担当者] ([日付])」TODOコメントの標準フォーマット。担当者と日付を入れると管理しやすい。
㉖ FIXME: This is a temporary workaround. [恒久対応の説明]. 「FIXME: これは一時的な回避策です。[恒久対応の内容]。」技術的負債を明示するコメント。
㉗ HACK: [なぜこのような実装になっているかの説明]. 「HACK:[理由の説明]。」やむを得ない実装の理由を記録するコメント。
変更履歴・理由のコメント
㉘ This was changed from [旧実装] to [新実装] because [理由]. 「[旧実装]から[新実装]に変更した理由は[理由]です。」変更理由を記録するコメント。
㉙ See [issue番号 / PR番号] for context. 「背景は[issue番号/PR番号]を参照してください。」関連issueへの参照コメント。
㉚ Do not modify this without updating [関連ファイル/ドキュメント]. 「これを変更する場合は[関連ファイル/ドキュメント]も更新してください。」注意を促す警告コメント。
技術英語ライティングを鍛える3つの習慣
GitHubのissueやPRを英語で書く練習をする
日常業務の中でライティングを練習できる最もコストゼロの方法が、issueやPRを英語で書くことだ。
最初は短い説明文だけでも英語にするところから始めよう。 「This PR fixes [バグ内容].」「This adds [機能名] to [コンポーネント].」——この程度の1文から始めれば十分だ。
続けることで、英語で技術的な内容を書くことへの抵抗感がなくなっていく。 GitHubで使える英語フレーズをさらに確認したい方は、以下の記事も参考にしてほしい。
GitHubコメントで使える英語フレーズ30選【現役エンジニアが厳選】
英語の技術ドキュメントを読んで表現を真似る
ReactやDockerなどの公式ドキュメントは、技術英語ライティングの最高の教材だ。
「どんな構造で書かれているか」「どんな単語を使っているか」を意識しながら読むことで、自然に使える表現が増えていく。
特に注目すべきポイントは以下の3点だ。
- 見出しの書き方(動詞から始まるものが多い:「Configure」「Install」「Deploy」)
- 注意・警告の書き方(Note / Warning / Caution の使い分け)
- 手順の書き方(番号付きリスト+命令形)
Grammarly等のツールでフィードバックをもらう
GrammarlyやDeepL Writeなどのライティング支援ツールを活用すると、自分の英語の問題点をリアルタイムで確認できる。
特に有効な使い方は、自分が書いた英語文をツールにかけてから修正案を確認し、「なぜそう修正されたのか」を理解することだ。 修正の理由を理解することで、同じ間違いを繰り返さなくなる。
まとめ:技術英語ライティングは「ルール」と「型」で上達する
この記事では、技術英語ライティングの基本ルールとフレーズ30選を紹介した。
重要なポイントをまとめる。
- 結論から書く・1文1メッセージ・能動態優先の3つが基本ルール
- 具体的な数字・固有名詞を使うことで文章の明確さが大幅に上がる
- ドキュメント・メール・コードコメントそれぞれに定番フレーズがある
- まずGitHubのissueやPRを英語で書くことから練習を始める
- 公式ドキュメントを読んで表現を真似ることが上達の近道
技術英語ライティングは、才能より「型の習得」と「継続的な練習」で伸びるスキルだ。 まず今日、次のissueかPRの説明文を英語で1文だけ書いてみてほしい。
その小さな一歩が、半年後の大きな変化につながっていく。
ライティングスキルをさらに活かして、仕様書・設計書も英語で書けるようになろう。【テンプレあり】英語仕様書・設計書の書き方|エンジニアが使える表現30選でテンプレートと表現を体系的に解説している。


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