東浩紀さんの『平和と愚かさ』を読みました。
この本を手に取った理由は、平和について考えたいと思っていたからです。戦争のニュースを見るたびに、どうすれば戦争はなくなるのかと考える。しかし考えれば考えるほど、「戦争は結局なくならないのではないか」という出口のない考えに近づいてしまう。
いま戦争状態に置かれて苦しんでいる人たちに対して、自分には有効な解決策を示せるわけではありません。その無力感の中で、平和について考えること自体が、どこか行き止まりのように感じられていました。
そんな状態で読んだ『平和と愚かさ』は、自分にとって少し救いになる本でした。
『平和と愚かさ』はどんな本か
『平和と愚かさ』は、哲学者・批評家の東浩紀さんによる、戦争や平和、記憶、観光をめぐる本です。
ウクライナ、中国、旧ユーゴスラヴィア、ベトナム、アメリカ、広島など、戦争や歴史の記憶に関わる場所をめぐりながら、平和とは何か、戦争の記憶とどう向き合うのかを考えていきます。
ただの時事評論ではなく、紀行文としての読みやすさと、哲学的な考察の深さが同居している本です。
「平和ボケできること」は幸せなのだと気づいた
本書を読んで、特に印象に残ったのは「平和ボケ」についての視点です。
平和ボケという言葉は、普通はあまり良い意味では使われません。危機感が足りない、国際情勢をわかっていない、現実を見ていない。そういう批判の言葉として使われることが多いと思います。
けれども本書を読みながら、平和ボケできること自体が、実はとても幸せなことなのだと気づかされました。
戦争について考えずにすむ時間がある。日常を送り、旅行に行き、本を読み、博物館を訪れることができる。その状態は、決して当たり前ではありません。
平和ボケできる時間は、誰かに支えられている
さらに新鮮だったのは、平和ボケできる時間は、ただ自然に与えられているものではないという視点です。
誰かがそういう状態を作り、守ってくれているからこそ、自分たちは平和ボケでいられる。そして時代や状況が変われば、自分自身もまた、その平和を支える側で働くことになるのかもしれない。
この考え方は、自分にとって新しいものでした。
これまで自分は、戦争をどうなくすか、あるいは戦争は結局なくならないのではないか、という大きな問いの中で考えていました。けれども『平和と愚かさ』は、そこから少し違う場所に連れていってくれます。
戦争を一気になくす答えを示すのではなく、平和でいられる状態とは何か、平和ボケできる時間とは何によって支えられているのかを考えさせてくれるのです。
500ページでも読みやすい理由
『平和と愚かさ』は500ページほどある本ですが、思っていたより読みやすかったです。
理由は、紀行文パートと哲学パートのバランスが良いからだと思います。もし哲学的な議論だけで構成されていたら、自分には少しつまらなく感じられたかもしれません。
しかし本書には、実際に場所を訪れ、見て、歩き、考える流れがあります。そのため、抽象的な議論だけでなく、自分も旅をしながら考えているような感覚で読むことができました。
重いテーマを扱っているにもかかわらず、読み進めやすい本です。
読んでいて苦労した部分
一方で、日本が直接関わっていない戦争や地域の話題については、自分の無知を感じる場面も多くありました。
地理感覚が十分になく、背景を理解するのに苦労した部分もあります。
ただ、それも含めて、この本を読む意味があったと思います。自分がどれだけ知らないまま平和について考えていたのかに気づかされたからです。
平和について考えるには、やはり歴史や地理への理解も必要なのだと感じました。
歴史博物館の見方が変わった
読後に特に変わったのは、歴史博物館への関心です。
これまでも博物館を訪れることはありましたが、展示がどのような意図で作られているのか、何を記憶させようとしていて、何を見えにくくしているのかまでは、あまり意識していませんでした。
『平和と愚かさ』を読んだことで、今後博物館を訪れるときには、展示の仕方そのものにも目を向けてみたいと思うようになりました。
戦争や災害の記憶は、ただ保存されているだけではありません。どのように語られ、どのように並べられ、どのような感情を呼び起こすように設計されているのか。
そこにも、平和を考える手がかりがあるのだと思います。
広島など戦禍に見舞われた地域を訪れてみたい
本書を読んで、広島のような戦禍に見舞われた地域を実際に訪れてみたいと思いました。
平和について頭の中だけで考えるのではなく、場所に行き、展示を見て、そこで何が語られているのかを感じてみたい。
そして、自分自身の観光旅行を通じて、平和ボケでいられる理由を考えてみたいと思いました。
この本は、読むだけで終わる本ではなく、どこかへ行ってみたくなる本でもあります。
『平和と愚かさ』はどんな人におすすめか
『平和と愚かさ』は、戦争や平和について考えたい人におすすめです。
特に、次のような人には響くと思います。
- 戦争や平和について考えたい人
- 戦争はなくならないのではないかと感じている人
- 東浩紀さんの思想や文章に関心がある人
- 歴史博物館や戦争の記憶に関心がある人
- 哲学書は難しそうだけれど、紀行文なら読んでみたい人
明快な答えを与えてくれる本ではありません。しかし、答えが出ない問いの前で立ち止まっていた自分に、新しい視点を与えてくれる本でした。
まとめ|出口のない思考から少し救われた
『平和と愚かさ』を読んで、自分は少し救われたように感じました。
戦争はなくならないから仕方ない。そう考えてしまうと、そこで思考は止まってしまいます。しかし本書は、その閉じた場所から少しだけ外へ出るきっかけをくれました。
平和ボケできる幸せを自覚すること。
その平和が何によって支えられているのかを考えること。
そして、観光や博物館を通じて、平和について自分なりに考え続けること。
そこから始めてもいいのだと思えました。
戦争や平和について考えたいけれど、大きな理想論や絶望論だけでは疲れてしまった人に、『平和と愚かさ』をおすすめしたいです。


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