グローバルチームで「Technical Specを英語で書いて」と言われ、どこから手をつければいいか迷ったことはないだろうか。
日本語の技術仕様書は書き慣れていても、英語版は構成や用語の選び方に悩む人が多い。とくに「機能要件と非機能要件をどう英語で分けて書くか」で手が止まりがちだ。
この記事では、英語技術仕様書の基本構成と、すぐ使える日英フォーマットを紹介する。フレーズ30選もまとめたので、初めて英語版を書く場面でもコピペして使える。
英語技術仕様書に必要なセクションは8つ。概要・目的・スコープ・機能要件・非機能要件・制約・前提条件・用語定義で構成するのが国際標準のフォーマットだ。
英語技術仕様書とは?日本語版との違い
英語のTechnical Specification(技術仕様書)は、システムや機能が「何をどのように実現するか」を定義するドキュメントだ。
日本語版と構成は近いが、英語版では「要件の追跡可能性」と「曖昧さの排除」がより厳しく求められる。「〜すること」ではなく「The system shall…」の形式で書くことで、要件の明確さと法的効力が生まれる。
Technical Specが必要になる場面
Technical Specは主に以下の場面で作成する。
- 新機能・新システムの設計開始前
- 外部ベンダーへの開発委託時
- 複数チームをまたぐ機能連携の設計
- レガシーシステムのリプレイス計画
グローバルチームでは、認識のずれをドキュメントで防ぐことが開発品質に直結する。
日英で異なる構成の特徴
日本語版との最大の違いは「shall / should / may の使い分け」にある。
英語のTechnical Specでは、要件の強制度をこの3語で明示するのが標準だ。「shall」は必須要件、「should」は推奨事項、「may」は任意事項を意味する。日本語の「〜すること」に相当するのが「shall」だ。
この書き分けを知らないと、必須要件と推奨事項の境界が曖昧になり、実装の認識ずれを招く。
英語技術仕様書の基本構成(8セクション)
Technical Specには8つの標準セクションがある。それぞれの役割を把握してから書き始めると、全体がスムーズにまとまる。
| セクション | 英語名 | 役割 |
|---|---|---|
| 概要・目的 | Overview / Purpose | ドキュメントの目的と背景 |
| スコープ | Scope | 対象範囲と対象外の明示 |
| 機能要件 | Functional Requirements | システムが行う動作の定義 |
| 非機能要件 | Non-Functional Requirements | 性能・可用性・セキュリティ等 |
| システム構成 | System Architecture | コンポーネント構成・依存関係 |
| 制約事項 | Constraints | 技術的・ビジネス的な制限 |
| 前提条件 | Assumptions | 設計の根拠となる前提 |
| 用語定義 | Glossary | 本書で使用する用語の定義 |
Overview / Purpose(概要・目的)
Overviewには、「このドキュメントが何を定義しているか」と「誰が読む対象か」を書く。
1〜3段落で収めるのが基本だ。背景・目的・対象読者の3点を明記することで、読み手が全体像をすぐ把握できる。
Functional Requirements(機能要件)
機能要件は「システムが何をするか」を定義するセクションだ。
1要件1文の原則を守り、「The system shall…」の形式で書く。要件にはID(FR-001など)を付けると、レビューや変更管理がしやすくなる。
要件ヒアリングの英語表現は、エンジニアの英語要件ヒアリング術にまとめている。あわせて参考にしてほしい。
Non-Functional Requirements(非機能要件)
非機能要件は「システムがどのように動くか」を定義するセクションだ。
性能・可用性・セキュリティ・保守性などを数値で明記する。「高速に処理する」ではなく「The system shall respond within 200ms for 95% of requests」のように具体的に書くことが重要だ。
セクション別・英語フレーズ30選
概要・目的を書くフレーズ(10選)
| # | 英語フレーズ | 日本語訳 |
|---|---|---|
| 1 | This document defines the technical specifications for… | 本書は〜の技術仕様を定義するものです |
| 2 | The purpose of this document is to… | 本書の目的は〜です |
| 3 | This specification is intended for… | 本仕様書は〜を対象としています |
| 4 | This document covers the following components… | 本書は以下のコンポーネントを対象とします |
| 5 | Out of scope for this document is… | 本書のスコープ外は〜です |
| 6 | This specification supersedes version [X] dated 2026/06/07. | 本仕様書は〇年〇月〇日付バージョン[X]に代わるものです |
| 7 | Refer to [document name] for related specifications. | 関連仕様は[ドキュメント名]を参照してください |
| 8 | This document is subject to change as requirements evolve. | 本書は要件の変化に伴い変更される場合があります |
| 9 | Assumptions made in this document are listed in Section X. | 本書の前提条件はセクションXに記載しています |
| 10 | Any deviation from this specification must be approved by… | 本仕様からの逸脱は〜の承認が必要です |
要件・仕様を書くフレーズ(10選)
| # | 英語フレーズ | 日本語訳 |
|---|---|---|
| 11 | The system shall… | システムは〜しなければならない(必須) |
| 12 | The system should… | システムは〜することが推奨される |
| 13 | The system may… | システムは〜してもよい(任意) |
| 14 | The [component] shall process [input] and return [output]. | [コンポーネント]は[入力]を処理し[出力]を返す |
| 15 | The system shall validate [field] against the following rules: | システムは[フィールド]を以下のルールで検証する |
| 16 | Upon [event], the system shall [action]. | [イベント]が発生した場合、システムは[アクション]を行う |
| 17 | If [condition], the system shall display [error message]. | [条件]の場合、システムは[エラーメッセージ]を表示する |
| 18 | The [API endpoint] shall accept the following parameters: | [APIエンドポイント]は以下のパラメータを受け付ける |
| 19 | The system shall log all [events] to [destination]. | システムはすべての[イベント]を[宛先]にログ記録する |
| 20 | Data shall be retained for a minimum of [X] days. | データは最低[X]日間保持しなければならない |
制約・前提条件を書くフレーズ(10選)
| # | 英語フレーズ | 日本語訳 |
|---|---|---|
| 21 | This system must comply with [standard / regulation]. | このシステムは[標準・規制]に準拠しなければならない |
| 22 | The solution must be implemented using [technology]. | ソリューションは[技術]を使用して実装しなければならない |
| 23 | The system must integrate with [external system]. | システムは[外部システム]と連携しなければならない |
| 24 | It is assumed that [condition] will be in place at launch. | ローンチ時に[条件]が整っていることを前提とする |
| 25 | This specification assumes [dependency] is available. | 本仕様は[依存関係]が利用可能であることを前提とする |
| 26 | The system is not required to support [feature]. | システムは[機能]をサポートする必要はない |
| 27 | [Feature] is out of scope for version [X]. | [機能]はバージョン[X]のスコープ外です |
| 28 | The following constraints apply to this implementation: | 本実装には以下の制約が適用されます |
| 29 | Performance requirements are subject to revision based on… | 性能要件は〜に基づき改定される場合があります |
| 30 | Any changes to this document must follow the change control process. | 本書の変更は変更管理プロセスに従うこと |
API設計の英語表現は、エンジニアの英語API設計議論術にまとめている。設計書全般の英語表現は英語仕様書・設計書の書き方も参考にしてほしい。
テンプレートをダウンロード(Word)
以下のWordファイルをダウンロードして、プロジェクトに合わせてカスタマイズして使ってほしい。表の列・行はそのまま追加・削除できる。
📥 日本語テンプレートをダウンロード(Word)
📥 Download English Template (Word)
日本語版テンプレート(コピペOK)
以下のテンプレートはそのままコピーして使える。プロジェクトや機能に合わせてカスタマイズしてほしい。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作成日 | |
| バージョン | |
| 作成者 | |
| 承認者 |
1. 概要・目的
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 本書の目的 | |
| 対象読者 | |
| 関連ドキュメント |
2. スコープ
対象範囲:
対象外:
3. 機能要件
| ID | 要件内容 | 優先度 |
|---|---|---|
| FR-001 | システムは〜しなければならない | Must |
| FR-002 | システムは〜しなければならない | Must |
| FR-003 | システムは〜することが推奨される | Should |
4. 非機能要件
| ID | 区分 | 要件内容 |
|---|---|---|
| NFR-001 | 性能 | (例)95%のリクエストを200ms以内に処理する |
| NFR-002 | 可用性 | (例)月次稼働率99.9%以上 |
| NFR-003 | セキュリティ | (例)パスワードはbcryptでハッシュ化する |
5. システム構成
(コンポーネント図・依存関係を記載)
6. 制約事項
7. 前提条件
8. 用語定義
| 用語 | 定義 |
|---|---|
英語版テンプレート(コピペOK)
| Item | Details |
|---|---|
| Date | |
| Version | |
| Author | |
| Approver |
1. Overview / Purpose
| Item | Details |
|---|---|
| Purpose of this document | |
| Intended audience | |
| Related documents |
2. Scope
In scope:
Out of scope:
3. Functional Requirements
| ID | Requirement | Priority |
|---|---|---|
| FR-001 | The system shall… | Must |
| FR-002 | The system shall… | Must |
| FR-003 | The system should… | Should |
4. Non-Functional Requirements
| ID | Category | Requirement |
|---|---|---|
| NFR-001 | Performance | The system shall respond within 200ms for 95% of requests. |
| NFR-002 | Availability | The system shall maintain 99.9% uptime per month. |
| NFR-003 | Security | All passwords shall be stored using bcrypt hashing. |
5. System Architecture
(Insert component diagram and dependency overview here)
6. Constraints
7. Assumptions
8. Glossary
| Term | Definition |
|---|---|
まとめ
英語技術仕様書は、8つのセクションで構成するのが国際標準だ。
日本語版との最大の違いは「shall / should / may」による要件強制度の明示にある。必須要件は「The system shall…」、推奨事項は「should」で書くことで、実装の認識ずれを防げる。
今回紹介したテンプレートはそのままコピーして使える。まずは次のスプリントで作る機能のSpecから試してほしい。
アーキテクチャ設計の議論フレーズは、エンジニアの英語アーキテクチャ議論術も参考にしてほしい。


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