グローバルプロジェクトでは、開発を始める前に英語で要件定義書(BRD)を作ることが求められる。「何をどのセクションに書けばいい?」「英語でどう表現する?」と悩むエンジニアは多い。
この記事では、ITプロジェクトで実際に使える英語要件定義書の書き方を解説する。フレーズ20選・日英テンプレートもセットで用意した。コピペしてすぐに使える。
BRDを英語でしっかり書けると、ステークホルダーとの認識ずれを防ぎ、手戻りを大幅に減らせる。さっそく構成とテンプレートを確認しよう。
英語要件定義書(BRD)とは
BRD(Business Requirements Document)とは、プロジェクトで達成すべきビジネス目的・要件・スコープを定義する文書だ。開発チームとステークホルダーの「共通の約束事」として機能する。
英語では “Business Requirements Document” のほか “Requirements Specification” “Project Requirements Document” とも呼ばれる。
BRD・SRS・FRDの違い
似た文書が多くて混乱しやすい。3つの違いを整理しておこう。
| 文書名 | 略称 | 主な内容 | 作成者 |
| Business Requirements Document | BRD | ビジネス目的・課題・スコープ | BA・PM |
| Functional Requirements Document | FRD | システムが「何をするか」の機能仕様 | BA・開発 |
| System Requirements Specification | SRS | システムが「どう動くか」の技術仕様 | 開発チーム |
BRDは最上位の文書だ。FRDやSRSはBRDをもとに作成する。プロジェクト開始時にまずBRDを完成させ、ステークホルダーの承認を得てから詳細設計に進む流れが基本だ。
グローバルプロジェクトでBRDが必要な理由
グローバルチームでは、口頭での認識合わせが難しい。BRDで要件を文書化することで、時差を超えて全員が同じゴールを共有できる。
また、スコープ外の要求が後から追加される「スコープクリープ」を防ぐためにも、BRDは重要な役割を果たす。
BRDの5つの必須セクション
どの組織でも共通する5つのセクションを押さえておこう。
1. エグゼクティブサマリー(Executive Summary)
プロジェクトの目的・背景・期待される成果を1〜2段落で要約する。忙しいステークホルダーがまず読む部分だ。
「なぜこのプロジェクトが必要か」「何を達成するのか」を端的に伝えることが求められる。
2. ビジネス目的・課題(Business Objectives & Problem Statement)
現状の課題と、プロジェクトで達成したいビジネス目標を明記する。数字を使って具体的に書くと説得力が上がる。
例:「現在の受注処理に平均48時間かかっており、顧客満足度が低下している。このシステム導入により処理時間を8時間以内に短縮する。」
3. スコープ(Scope)
プロジェクトで対応する範囲(In Scope)と対応しない範囲(Out of Scope)を明確に定義する。
スコープを曖昧にすると、後から「それも対応してほしい」という要求が発生しやすい。Out of Scopeを明記することが特に重要だ。
4. 機能要件・非機能要件(Functional & Non-Functional Requirements)
機能要件(Functional Requirements):システムが「何をするか」を定義する。ユーザーストーリー形式または箇条書きで記述する。
非機能要件(Non-Functional Requirements):パフォーマンス・セキュリティ・可用性など「どのように動くか」を定義する。
要件の優先度はMoSCoW法(Must / Should / Could / Won’t)で整理すると管理しやすい。
5. 承認(Approval)
BRDの内容に合意したステークホルダーの署名欄を設ける。承認なしで進めるとスコープ変更の根拠がなくなるため、必ず取得する。
プロジェクト憲章との違いが気になる方は、【テンプレあり】英語プロジェクト憲章の書き方|ITプロジェクトで使える日英フォーマット付きも参考にしてほしい。
英語で書くときに使えるフレーズ20選
3つのカテゴリに分けてフレーズを紹介する。
目的・背景を説明するフレーズ
| 日本語 | 英語フレーズ |
| このプロジェクトの目的は〜だ | The purpose of this project is to ~ |
| 現在の課題は〜である | The current challenge is ~ |
| このシステムは〜を実現するために導入する | This system is being implemented to ~ |
| 期待される成果は〜だ | The expected outcome is ~ |
| プロジェクトの背景として〜がある | The background of this project is ~ |
| ビジネス上の優先課題は〜だ | The key business priority is ~ |
| このイニシアチブは〜の戦略に沿っている | This initiative is aligned with the ~ strategy |
要件を記述するフレーズ
| 日本語 | 英語フレーズ |
| システムは〜しなければならない(必須) | The system must ~ |
| システムは〜すべきである(推奨) | The system should ~ |
| システムは〜できることが望ましい(任意) | The system could ~ |
| ユーザーは〜することができる | The user shall be able to ~ |
| 〜の場合、システムは〜する | When ~, the system shall ~ |
| 要件の優先度はHighだ | This requirement is prioritized as High |
スコープ・制約を表現するフレーズ
| 日本語 | 英語フレーズ |
| 以下はスコープ内に含まれる | The following are in scope: |
| 以下はスコープ外とする | The following are out of scope: |
| 〜はこのプロジェクトでは対応しない | ~ is not covered in this project |
| 予算の制約として〜がある | A budget constraint is ~ |
| 技術的な前提条件として〜がある | A technical assumption is ~ |
| 〜はフェーズ2以降で対応する | ~ will be addressed in Phase 2 or later |
| 〜を前提として要件を定義している | Requirements are defined on the assumption that ~ |
要件ヒアリングで使えるフレーズは、【例文あり】エンジニアの英語要件ヒアリング術|要件定義議論フレーズ30選も参考にしてほしい。
テンプレートをダウンロード(Word)
以下のWordファイルをダウンロードして、プロジェクトに合わせてカスタマイズして使ってほしい。表の列・行はそのまま追加・削除できる。
空白テンプレート(すぐに書き始めたい方向け)
📥 日本語テンプレートをダウンロード(Word)
📥 Download English Template (Word)
完成版サンプル(記入例・使い方の参考に)
受注管理システム刷新プロジェクトを題材にした記入例。各セクションの書き方がひと目でわかる。
📥 日本語サンプル(完成版)をダウンロード(Word)
📥 Download English Sample (Completed) (Word)
日本語版テンプレート(コピペOK)
以下のテンプレートをコピーして、プロジェクトに合わせて使ってほしい。
基本情報
| 項目 | 内容 |
| プロジェクト名 | |
| 文書番号 | BRD-〇〇〇 |
| バージョン | 1.0 |
| 作成者 | 〇〇(役割:〇〇) |
| 作成日 | 20XX年〇月〇日 |
| ステータス | ドラフト / レビュー中 / 承認済 |
1. エグゼクティブサマリー
〇〇の課題を解決するために、〇〇システムを導入する。このプロジェクトにより〇〇を実現し、〇〇の改善を目指す。
2. ビジネス目的・課題
| 項目 | 内容 |
| 現状の課題 | |
| ビジネス目標 | |
| 期待される成果(KPI) | |
| 優先度 | High / Medium / Low |
3. スコープ
| 区分 | 内容 |
| スコープ内(In Scope) | |
| スコープ外(Out of Scope) |
4. 機能要件
| No. | 要件 | 優先度 | 備考 |
| FR-001 | Must / Should / Could | ||
| FR-002 | Must / Should / Could | ||
| FR-003 | Must / Should / Could |
4-2. 非機能要件
| 区分 | 要件 | 目標値 |
| パフォーマンス | ||
| セキュリティ | ||
| 可用性 | ||
| 拡張性 |
5. 承認
| 役割 | 氏名 | 決裁 | 日付 | コメント |
| スポンサー | 承認 / 差戻 / 保留 | |||
| PMO | 承認 / 差戻 / 保留 | |||
| ビジネスオーナー | 承認 / 差戻 / 保留 |
英語版テンプレート(コピペOK)
英語版テンプレートは以下の通りだ。各セクションのヘッダーはそのまま使ってほしい。
Basic Information
| Item | Details |
| Project Name | |
| Document No. | BRD-[Number] |
| Version | 1.0 |
| Author | [Name] ([Role]) |
| Date | [Date] |
| Status | Draft / Under Review / Approved |
1. Executive Summary
[Project Name] is being initiated to address [current challenge]. This project will deliver [outcome] and achieve [business goal].
2. Business Objectives & Problem Statement
| Item | Details |
| Current Problem | |
| Business Objective | |
| Expected Outcome (KPI) | |
| Priority | High / Medium / Low |
3. Scope
| Category | Details |
| In Scope | |
| Out of Scope |
4. Functional Requirements
| No. | Requirement | Priority | Notes |
| FR-001 | Must / Should / Could | ||
| FR-002 | Must / Should / Could | ||
| FR-003 | Must / Should / Could |
4-2. Non-Functional Requirements
| Category | Requirement | Target |
| Performance | ||
| Security | ||
| Availability | ||
| Scalability |
5. Approval
| Role | Name | Decision | Date | Comments |
| Sponsor | Approved / Rejected / Pending | |||
| PMO | Approved / Rejected / Pending | |||
| Business Owner | Approved / Rejected / Pending |
BRDを英語で書く3つのポイント
要件はMoSCoW法で優先度をつける
すべての要件を「同じ重要度」で扱うと、開発チームが何から取り組むべきかわからなくなる。MoSCoW法で優先度を明示しよう。
- Must:必須。これがないとプロジェクトが成立しない
- Should:重要。できる限り対応する
- Could:あれば望ましい。リソースがあれば対応
- Won’t:今回は対応しない(将来的には検討)
数字・日付を使って具体的に書く
「処理を速くする」ではなく「応答時間を3秒以内にする」のように、数字で要件を定義する。あいまいな表現は後でトラブルの原因になる。
“The system shall respond within 3 seconds for 95% of requests.” のような書き方が英語BRDの基本だ。
ステークホルダーの承認を必ず取得する
BRDは承認なしで進めると「そんな要件は聞いていない」というトラブルが起きやすい。承認欄に署名をもらうことで、スコープ変更の要求にも根拠を持って対応できる。
要件定義を英語で進める際の用語や交渉フレーズは、【保存版】「要件定義」を英語で言うと?|SRS・BRD・用語・フレーズ完全ガイドも活用してほしい。
まとめ:BRDを英語で書く習慣がプロジェクトの手戻りを防ぐ
英語要件定義書(BRD)の必須セクションは5つだ。
- Executive Summary(エグゼクティブサマリー):目的・背景を1〜2段落で要約
- Business Objectives(ビジネス目的・課題):現状課題とKPIを数字で明記
- Scope(スコープ):In / Out of Scopeを明確に定義
- Requirements(機能・非機能要件):MoSCoW法で優先度をつけて記述
- Approval(承認):ステークホルダーの合意を署名で取得
BRDをプロジェクト開始時にしっかり作ることで、後からの手戻りとスコープ変更を大幅に減らせる。テンプレートを活用して、今すぐ作ってみてほしい。


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